チークの床と、猫のような身体感覚。

「お父さんの設計した家は、固くて居場所がない」

少し前に、娘から投げかけられた一言です。
建築家として一瞬フリーズしてしまうような手痛い指摘でした。

たしかに、庭の水やりをしてくれている時の娘を見ていると、実によく動きます。日当たりの良い場所、風の抜ける場所を感覚的に見つけては、そこに佇んでいる。その姿はどこか「猫の身体感覚」に近いものがあります。

そんな彼女にとって、ガランドウの2階空間は端正で美しくても、生身の身体をあずけて「ゴロン」とできる柔らかさが足りなかったのかもしれません。

特に、床に選んだ「チーク材」。
世界三大銘木の一つでもあるチークは、しっとりとした気品ある美しい木目と、圧倒的な高級感をもたらしてくれる素材です。この床材は、設計当時これから同居する母(妻の母)と一緒にショールームへ何度も足を運び、「これがいいね」と対話を重ねて選定した、大切な記憶のカタチでもあります。

ただ、木材としての密度が高く、強靭で「硬い」という特性も持っています。建築の足元を美しく、かつ堅牢に引き締めてくれるこの頼もしい硬さが、娘にとっては「そのまま直に寝転がるには、ちょっと身構えてしまう固さ」に映ったのでしょう。

素材の選択肢として思い出したのが、今春竣工した「ケヤキとともに暮らす家」の床のことです。

あの家の床には、足触りが柔らかく、温かみのある「杉板」を採用しています。お施主様ご家族ののびやかな暮らしぶりや全体の雰囲気、そしてコストの面から、これこそがベストバランスだと確信してご提案した素材です。

左側の塗り壁に落ちる斜めの光が、杉の柔らかな木目を浮き上がらせています。
お施主様のために選び抜いたはずのあの杉板の質感を思い返したとき、娘の言う「ゴロンとできる柔らかさ」の正体が、実はこの、杉が持つ物理的な「柔らかさ」と「人肌に近い温かさ(熱伝導率の低さ)」そのものだったのではないか、と思いました。彼女の「猫のような身体感覚」は、無意識のうちにチークの硬質さではなく、杉のような有機的な柔らかさを求めていたことに、気づかされたのです。

建築家がエゴで作った「美しいだけのギャラリー」のような空間は、そこで暮らす生身の人間を緊張させてしまいます。生活の背景であるはずの建築が、主役を脅かしては本末転倒です。その「背景としての建築」をまさに自問自答している舞台が、この美浜のコートハウスです。

元々は母との同居を見据えて設計した二世帯住宅で、竣工後の4年間は母がひとりで暮らしていましたが、来年の春、ついに私たち家族が引っ越して本格的な同居をスタートします。

それに伴い、ガランドウだった2階が家族のLDKになります。これまでは私のアトリエの延長線だった場所が、「家族が毎日を営む場所」へと生まれ変わる。そのための整備を、これから本格的に計画していくことになりました。

テーマは、「建築は固く、設えは柔らかく」です。

空間のBefore / After:大人な佇まいと、猫の野生

これまでは、空間の骨格をそのまま見せるために、あえて家具を置いていませんでした(Before)。

新しく計画しているAfterのイメージは、照明の陰影が美しく、素材の質感が引き立つような、少し「大人な落ち着いた雰囲気」を目指しています。
ですが、ここで私のエゴだけで締め上げすぎては、また娘に「居場所がない」と言われてしまいます。義母と選んだチークの床が持つ大人っぽいシックな高級感と歴史を何より大切に引き継ぎながら、そこに娘の言う「生身の身体をあずけてゴロンとできる柔らかさ」を、どのように破綻なく、設え(インテリア)として重ね合わせていこうかと、いま心地よい悩みに頭を巡らせています。

AIによるイメージ
AIによるイメージ

・家具による「柔らかさ」の実験
まずは上質な家具や大ぶりのラグで空間の重心をぐっと下げてみます。完璧なハコのなかに、あえて「猫のようにまどろめる余白(ブランケットやクッション)」を混ぜていく試みです。

・造作ミニキッチンの設置
お施主さまとお茶を飲みながら雑談できる場であり、私たちのこれからの暮らしの中心となる造作ミニキッチンを設えます。淹れたてのコーヒーの香りが、固い空間の輪郭をふっと緩めてくれるはずです。

建築家として、細部の精度を妥協することは一切ありません。
けれど、そこでの暮らしや過ごし方は、どこまでも無防備で、柔らかくていい。

義母が4年間大切に守ってくれたハコに、来春、ここから新しい家族の日常が始まります。
娘の飾りのない素直な一言から始まったこの変化を、これからの設計のヒントにしながら、美しくも居心地の良い「背景としての建築」を仕立てていきたいと思います。

計画の進捗や、具体的アイデアのせめぎ合いは、またこちらで正直にご報告したいと思います。

【ケヤキと共に暮らす家】完成!お施主様と「季織苑」さんとで育む、生命力溢れる庭

千葉市の樹木園「イシイ・グリーン」さんでの植栽選定から数週間。先月末に無事に外構・造園工事が完了しました!
今回は、その植栽工事の様子と、ついに完成した外構の表情をお伝えします。

植物を迎えるための足元のしつらえと、繊細な素材のコントラスト

現場では木々を迎える準備として、まずは駐車スペースから玄関へと続くアプローチのベースとなる工事が進められました。

駐車スペースの足元に敷き並べたのは、300×600サイズのコンクリート平板です。コストとデザインのバランスを丁寧に吟味し採用したこの素材は、規則正しく敷き詰められることで空間に端正な表情をもたらします。

一方で、そこから玄関へと続くメインアプローチには「土間コンクリートの洗い出し仕上げ」を採用しました。

洗い出し仕上げとは、表面のセメントが固まりきる前に水で洗い流し、中に伏せ込まれた骨材(砂利)を美しく露出させる手法です。職人さんの感覚と手仕事が光る、非常に繊細な仕上げです。

コンクリート平板のソリッドで端正な表情と、洗い出し仕上げの細やかで有機的なテクスチャー。この二つの素材が足元で織りなす静かなコントラストが、空間を引き締め、豊かなリズムを生み出してくれます。この「端正な余白」が整うことで、これから植えられる木々の生命力がいっそう際立つのです。

現場への到着、そして植樹の喜び

イシイ・グリーンさんから届いた、根巻きされた木々。青いシートの上に瑞々しい緑が広がり、現場は一気に土の匂いと新鮮な生命力に包まれました。


(動画:造園パートナー「季織苑」さんによる、丁寧な植栽作業の様子。)

緑の間を縫うアプローチと、視線の先にある風景

そして、ついに外構が完成しました。

今回、アプローチの設計には特にこだわっています。道路から玄関へと向かう道筋は、新しく植えられた樹木の間を縫うように、あえてクランクさせて距離感を持たせました。一歩進むごとに緑の表情が変わり、敷地の中に心地よい奥行きが生まれます。

そうして樹木の間を抜けた先、視線の正面にはアトリエの出窓がすっきりと現れる配置にしています。建築の端正な開口部が庭の緑に切り取られ、日々の往来に美しいシークエンス(視線の移り変わり)をもたらしてくれます。

具体的な樹種の紹介:四季を彩るシンボルツリーと常緑樹

ここで、この場所に根を下ろした木々たちを具体的にご紹介します。

シンボルツリー(落葉樹):ヤマボウシ
クランクするアプローチ沿いの主役として植えられたのは、動画にも登場していた小さな白い花が可憐な「ヤマボウシ」です。季節ごとに白い花、瑞々しい新緑、美しい紅葉、そして赤い実が楽しめます。この家の顔として、四季折々の表情で住人と訪れる人々を優しく迎えてくれます。

玄関前目隠し(常緑樹):ソヨゴ
日々の暮らしを穏やかに包み込む目隠しとしては、葉が密で美しい「ソヨゴ」を採用しました。適度なプライバシーを保ちながら、豊かな緑が暮らしに彩りを与えます。

他にも、アオダモ、ヒメシャラといった落葉樹、そして多様な低木類が、元からこの敷地にあった大きなケヤキの木と寄り添うように植えられました。

これから育む、家族の庭

私たちが常に大切にしている「背景としての建築」という考え方。
静かな建築が背景となり、そこに今回植えられた木々の緑や、風に揺れる影が重なります。

外構・造園工事が完了し、ようやく「ケヤキと共に暮らす家」の全体像が整いました。これから、この木々が四季の移ろいとともに成長し、お施主様ご家族とともに、この場所を豊かに育んでいく。その姿を見るのが本当に楽しみです。

今回の家づくりを支えてくださった皆様、そして庭づくりを共に創り上げてくださったイシイ・グリーンさん、季織苑さん、お施主様ご家族に心から感謝を込めて。

【メディア掲載】Webマガジン『ekrea Parts』の特集インタビューを受けました

こんにちは。カワムラアーキテクツの川村です。

新緑が深まり、アトリエ(美浜のコートハウス)の前庭では、鮮やかなクリーピングタイムの花が一面に咲き広がり、豊かな緑に包まれる美しい季節を迎えました。

さわやかな晴天に恵まれた先日のこと。建築パーツ専門サイト『ekrea Parts』の特集インタビューのため、取材担当の方がこのアトリエへ足を運んでくださいました。そして先日、その特集記事が無事に公開の運びとなりました。

記事には、「住まい手の人生を引き立てる『器』をつくる」というタイトルを付けていただきました。当日はライターの方と対話を重ねる中で、私自身、改めて自らの設計思想の根源を見つめ直すような、静かな時間を過ごさせていただきました。

幼い頃、父に連れられて巡った美術館での原体験。そして、独立前に師から学んだ、自身の主張を押し付けるのではなく、住まい手の声に深く耳を澄ますことの大切さ。それらが今の「生活の背景としての建築」という私の軸を、どのように形作ってきたのか。

記事の中では、今年3月に竣工した「ケヤキと共に暮らす家」や、このアトリエの事例を交えながら、視覚的な雑音を削ぎ落とした「ノイズのない空間」についてお話ししています。

既製品ではどうしても生じてしまう隙間や違和感を解消する、ミリ単位の「造作」へのこだわり。そして、木目が美しいタモ材を用いたキッチンに見る、取っ手を極限までなくした「引き算の美学」。普段の図面や写真だけでは語りきれない、そうした素材選びの裏側やディテールの意図についても、丁寧に掬い上げていただきました。

家づくりを考えていらっしゃる方だけでなく、日々の暮らしを整えたいと感じている方にも、何か届くものがあれば幸いです。

お時間の許す時に、ぜひご一読ください。

▶︎ 特集記事はこちら:〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々27〉「深く耳を傾け、住まい手の人生を引き立てる『器』をつくる建築家」

「ケヤキと共に暮らす家」生命力溢れる「イシイ・グリーン」へ。お施主様との植栽選定

「ケヤキと共に暮らす家」は、建物の完成を迎え、いよいよ空間の総仕上げとなる外構・造園工事のフェーズへと進んでいます。
建物の内と外を繋ぎ、暮らしに豊かな表情を与える庭づくりは、建築を仕上げる上で欠かすことのできない重要なプロセスです。先日、風景づくりを共にしている造園のパートナー「季織苑」さんのご案内のもと、お施主様ご家族と一緒に、千葉市緑区にある「イシイ・グリーン」さんへ植栽の選定に行ってまいりました。

こちらはこの地で40年ほどの歴史を持つ、地域に根ざした樹木園です。その広大な敷地には、長い年月をかけて大切に育てられてきた多種多様な樹木が息づいており、まさに植物の生命力が溢れる圧巻の空間でした。
見学にあたり、農場を歩くための長靴をご用意してくださっていました。長靴を履いたのは一体何年ぶりでしょうか。少し童心に返ったような新鮮な気持ちで、土の感触を踏みしめながら広大な敷地を歩きました。

季織苑の時松ご夫妻

出荷に向けて「根巻き」され、ずらりと並んだ木々は、ちょうど瑞々しい新緑が芽吹き始めた美しい時期を迎えています。樹形や佇まいはもちろんのこと、葉の色合いや枝先の細やかな表情まで、一つひとつご自身の目で確かめながら選んでいただけるのは、この季節ならではの醍醐味です。
空間の顔となる落葉樹のシンボルツリーから、日々の暮らしを穏やかに包み込む目隠しとしての常緑樹まで、役割に合わせて様々な樹種を選定していきました。樹木愛に溢れた社長のお人柄にも触れ、選定は終始和やかな雰囲気で進みました。お施主様もこの歴史ある場所での木々との出会いを心から楽しまれているご様子で、これから共に育っていく庭への愛着がより一層深まる、大変豊かな時間となりました。

ハナミズキ
春の訪れを告げるように上を向いて白い花を咲かせます
ソヨゴの株立ち
常緑広葉樹で目隠しとして

今回出会った木々たちが、実際の敷地にどのように根を下ろし、建築と響き合うのか。次回は、現場での植樹の様子などお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。

光と素材が語る日 ──「ケヤキと共に暮らす家」内覧会と、その先へ

建築は、足場が外れ、図面通りの形が立ち上がった瞬間が「完成」ではありません。そこへ光が差し込み、人やモノが入り込むことで、初めて空間が呼吸を始めます。
先月、穏やかな春の光の中で開催された「ケヤキと共に暮らす家」の内覧会は、まさにその「空間に息吹が宿る瞬間」に立ち会えた一日となりました。

ご来場いただいた皆様を最初にお迎えする土間のサイン。ここから、静かな高揚感に満ちた時間が始まりました。

■ 光と素材が織りなす「普遍的な骨格」

オープンハウスでは、家具や小物が置かれる前の「余白」としての空間の美しさも、多くの方に体感していただきました。

空間の主役となるのは、光と素材そのものです。手仕事の痕跡が残る漆喰の壁に、時刻と共に表情を変えながら落ちる鋭い光と影。無垢の床板に描かれる、暖かな日溜まり。

そして、その空間の質感を邪魔することなく、静かに寄り添うミニマルな照明器具。流行や過剰な装飾を引き算した後に残る、逃れようのない「普遍的な空間の骨格」と手触りがそこにはあります。

■ 「Ru* silver」様の作品が彩る、豊かな交流の時間

この日、アトリエスペースにはお施主様であるシルバーアクセサリー作家「Ru*シルバー」様が、オープンハウスに合わせてご自身の作品を急遽展示してくださることになりました。
(Ru* silver様の素晴らしい作品やレッスンの様子は、ぜひ公式HPをご覧ください)
🔗 Ru* silver 公式ウェブサイト


光を浴びる古本の上に置かれた繊細なネックレス。ガラスの小瓶の緑と、鈍く光るシルバーの小片。静謐で美しい光が満ちていました。

そして何より私の心に強く残ったのは、展示された作品を囲みながら、お施主様とご来場いただいた皆様がとても楽しそうに言葉を交わし、交流されているお姿でした。アトリエという「余白」が、単なる作業場を超えて、人と人とを繋ぐ豊かな場として機能し始めている。これからこの場所で育まれていくであろう数々の出会いと時間を予感させる、設計者としてこれ以上ないほど幸せな光景でした。

■ オープンハウスを終えて。穏やかな日常の予感

そしてオープンハウスを終えた後日。居住スペースには、お施主様の真新しいソファが運び込まれました。

アトリエでの賑やかな交流の時間から一転し、そこには「家族のための静かな時間」が流れていました。自然光を浴びる木目の天井と白い塗り壁。ソファに腰を下ろし、間接照明の柔らかな陰影に包まれるひととき。確かな骨格を持った器が、これから始まるご家族の穏やかな日常を静かに待っているような、確かな安らぎを感じる光景でした。

■ 景色を切り取る窓、そして庭との繋がりへ

2階の広間に設けられた、大きな窓から見えるケヤキの枝ぶり。新緑の時期が楽しみです。

現在、現場ではいよいよ「季織苑」さんによる造園工事がスタートしています。
造園が仕上がる5月の新緑の頃には、庭の緑と家が調和した「ケヤキと共に暮らす家」が全貌を現します。

■ 結び

建築家が用意できるのは、豊かな時間が流れるための「器」でしかありません。その器が、アートや人との出会い、お気に入りの家具、そして四季折々の庭の緑によって満たされたとき、家は独自の息吹を宿します。
これからお施主様の豊かな生活と共に、ゆっくりと、しかし着実に成長していくこの家の過程を、引き続き見守っていきたいと思います。素晴らしい一日を共有してくださった皆様、お施主様に心より感謝申し上げます。

カワムラアーキテクツ
川村浩二

【内覧会のご案内】土地の記憶を受け継ぎ、暮らしで仕上げる「器」。「ケヤキと共に暮らす家」がまもなく竣工します。


こんにちは。カワムラアーキテクツの川村です。
以前よりブログでも進捗をお伝えしておりました、新築住宅「ケヤキと共に暮らす家」がまもなく竣工の運びとなります。
このたび、お施主様のご厚意により完成見学会(オープンハウス)を開催させていただくことになりました。

今回は、この住まいに込めた設計の想いと、見学会の見どころについて少しお話しさせていただきます。
1. 土地の記憶を受け継ぐ「ケヤキ」と共に
この住まいの名前にもなっている「ケヤキ」。実はこの木は、以前からこの土地に根を下ろし、ご家族の歴史を静かに見守ってきた既存の樹木です。
建て替えの計画を進めるにあたり、私たちはこの立派なケヤキを伐採するのではなく、新しい住まいのシンボルツリーとして残す決断をしました。
春には瑞々しく芽吹き、夏には室内に心地よい木漏れ日を落とし、秋には美しく葉を染める。その大きな枝葉は、親世代と子世代という2つの世帯を、程よい距離感で優しく包み込む「大きな傘」のような役割を果たしてくれます。
土地の記憶をそのまま受け継ぎ、そこに新しい日々の営みと風景を重ねていく。それが「ケヤキと共に暮らす家」の出発点です。

2. 完成された「箱」ではなく、暮らしで仕上げる「器」
リビングに入りふと見上げると、天井には無垢の垂木(たるき)が連続しています。
屋根を支える木の骨組みをあえて隠さずに見せることで、空間全体が静かに深呼吸しているような、ごまかしのない「正直な姿」が現れました。
お化粧をしたような過度な演出は避け、素材そのものが持つ「生成り」のような自然さを大切にしています。
ここは、引き渡しの瞬間がピークとなる完成された「箱」というよりも、これからの暮らしが入り込むことでゆっくりと仕上がっていく「器」です。ケヤキの木漏れ日が無垢の木肌に落ちる様を眺めながら、ゆったりとした時間の流れを感じていただけるはずです。

3. 素材の正直な姿と、手仕事の温もり
足元には、柔らかく温もりのある杉の無垢材を敷き詰めています。そして、空間に柔らかな質感を添えている一部の漆喰壁は、なんと**お施主様ご自身による施工(DIY)**で仕上げられました。
ご家族の手で直接壁を塗るという「手仕事」の痕跡が、この家に唯一無二の愛着と温もりをもたらしています。差し込む光の角度や季節の移ろいによって、木目や漆喰のコテ跡が豊かな表情を見せてくれます。

4. シルバーアクセサリー作家「Ru* silver」様のアトリエ
そして、この「器」の中に内包されているのが、お施主様であるシルバーアクセサリー作家「Ru* silver」様の専用アトリエです。
Ru* silver様は、銀粘土(アートクレイシルバー)を用いて「大人カワイイ」純銀アクセサリーを手がけられ、ご自身の「わたし時間」を大切にするレッスンも主宰されています。自邸の壁をご自身で塗るほど手仕事を愛する作家様が、創作に没頭できるよう、光の入り方や作業動線に徹底的にこだわって設計しました。
当日の実際の作品展示はございませんが、無垢の木や漆喰と同様に、使い込むほどに味わいを増す「シルバー」という素材と向き合うための、美しく静謐なクリエイティブ空間は必見です。
(Ru* silver様の素晴らしい作品やレッスンの様子は、ぜひ公式HPをご覧ください)
🔗 Ru* silver 公式ウェブサイト

5. チームで創り上げた住まい
このプロジェクトは、私たちカワムラアーキテクツだけでなく、多くの専門家とのチームワークによって形となりました。素晴らしい技術とサポートで支えてくださった皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。

■ Project Team ■
・設計監理:カワムラアーキテクツ 川村浩二
・構造設計:STL 磯辺聡
・施工:かしの木建設 黒川靖彦・吉田雄治・山本直樹
・造園(2期工事):季織苑 時松克史・時松淳子
・ローンコンサルティング:アラウンドアーキテクチャー 佐竹雄太・久保田泰世

オープンハウス詳細・お申し込み
家づくりをご検討中の方はもちろん、アトリエのある暮らしや、2世帯住宅の程よい距離感のつくり方など、たくさんのヒントをお持ち帰りいただける機会となっております。
ぜひ、実際の空気感を感じにいらしてください。
• 日程: 3月8日(日)
• 時間: 10:00〜17:00(※予約制)
• 場所: 千葉県市川市(プライバシー保護のため、ご予約いただいた方に詳細な住所をご案内いたします)
【ご予約方法】
見学をご希望の方は、弊社HPのお問い合わせフォームより、以下の項目をお知らせください。
1. お名前
2. 参加人数
3. ご希望の時間
4. 当日連絡のつくお電話番号
皆様にお会いできることを、心より楽しみにしております。

お問い合わせやご相談はこちらより

担当作が2件掲載! エクスナレッジ新刊『最高の家』とカワムラアーキテクツの原点


先日、前職である彦根建築設計事務所の彦根明さんより一冊の本を頂きました。
2026年2月にエクスナレッジから出版されたばかりの新刊、その名も『最高の家』です。
彦根さん、出版おめでとうございます。そして、貴重な著書をご恵贈いただき、心より感謝申し上げます。

この本は、単なる建築作品集ではありません。
家が完成するまでのプロセスや、その後の暮らしぶりが、美しい写真と文章、そして彦根さんならではの繊細なコンセプトスケッチと共に紹介されています。
それぞれの家族に寄り添った「最高」の形が丁寧に描かれており、これから家づくりを考える方にとって、非常に読み応えのある一冊となっています。

実はこの本に掲載されている12の物語のうち、私が担当させていただいた作品が2件含まれています。
巻末の担当者一覧にも、私の名前(川村浩二)を記載していただきました。
当時、お施主様の想いを形にするために細部までこだわり抜き、現場と何度もやり取りを重ねた日々が思い出されます。
今回改めて書籍としてその結晶を眺めると、当時の苦労よりも、良い家をつくり上げた達成感と誇らしさが込み上げてきます。
建築家として育てていただいた日々に、改めて感謝の念を抱きました。

長いアプローチのある家
水盤のある家

私が現在主宰するカワムラアーキテクツの設計活動においても、この「最高の家」をつくる精神は色濃く受け継がれています。
• 土地のポテンシャルを最大限に引き出すこと
• お施主様のライフスタイルに深く寄り添うこと
• 細部のディテールまで徹底して美しく納めること
前職で培ったこれらの経験と技術は、現在の私たちの事務所の「核」となっています。
独立後も変わらず、むしろより一層の情熱を持って、目の前のお客様にとっての「最高の家」を提案し続けています。

本屋さんで見かけた際は、ぜひ『最高の家』を手に取ってみてください。建築の奥深さと楽しさに触れられるはずです。
そして、この本に載っているような、
「物語のある家づくり」
「設計密度の高い、心地よい住まい」
にご興味を持たれた方は、その系譜を受け継ぎ、
新しい風を吹き込むカワムラアーキテクツのドアを叩いてみてください。
あなただけの「最高の家」を一緒につくりましょう。

お問い合わせやご相談はこちらより

雪見障子が切り取る、静寂という風景


先日は千葉・美浜では珍しく、雪が積もりました。
皆様の地域ではいかがでしたでしょうか。
ここ「美浜のコートハウス(アトリエ)」も、今日はいつもとは全く違う表情を見せています。
写真は、和室の雪見障子からの景色です。
普段は穏やかな光を透かすだけの障子ですが、下半分にあるガラス部分の孫障子(まごしょうじ)を摺り上げることで、そこには劇的な変化が生まれます。
雪の白さと、障子の桟(さん)が描く幾何学的なライン。
そして、その奥に広がる有機的な木々の姿。
建築において開口部は単に光や風を取り込むだけでなく、風景をどう「切り取る」かという装置でもあります。
全面ガラス張りで外と一体化する開放感も素晴らしいですが、こうして建具によって視線を制御し、見たい景色だけを選び取る行為には、日本建築特有の奥ゆかしさと、ある種の「作為的な美」を感じずにはいられません。
しんしんと降る雪の音さえ聞こえてきそうな、静寂の時間。
温かいお茶を飲みながら、畳の上で低く座り、切り取られた白い世界を眺める。
忙しない日常の中で、ふと立ち止まり、こうした静謐な時間に身を置くことも、豊かな暮らしには不可欠な要素だと改めて感じさせられます。

2026年の始まり | 稲毛の浜と、姿を現したケヤキの家

新年あけましておめでとうございます。
カワムラアーキテクツの川村です。

写真は、私のアトリエのすぐ近くにある稲毛の浜です。
お正月に娘達と一緒に海へ散歩に出かけました。
砂浜にしゃがみ込んで、彼女達が楽しそうに記した「2026」の文字。
波音だけの静かな時間の中でその背中を見ていると、新しい年が穏やかで希望に満ちたものになるような、そんな予感がしました。
私たちがつくる「建築」もまた、こうして次の世代へと記憶を繋いでいく背景となるものです。
本年も、この美浜の地で、ご家族の暮らしを支える丁寧な建築づくりに励んでまいります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、現在進行中のプロジェクト「ケヤキと共に暮らす家」は年末に足場が外れました。


これまでシートに覆われていた建物が、冬の空の下でその全貌を現しました。
海が自然の雄大さを教えてくれるように、敷地に立つケヤキの古木もまた、この土地の記憶と生命力を象徴しています。そのケヤキに寄り添うように計画した住まいが、実際の風景として立ち上がった姿には感慨深いものがあります。

現在は、2月末のお引き渡しに向けてラストスパートに入っています。お施主様と職人さんたちと共に細部までこだわり、仕上げていきます。
完成時には、お施主様のご厚意によりオープンハウス(完成見学会)を開催する予定です。
「海辺の散歩」のように、心地よい時間を感じていただける空間になっているかと思います。
日程などの詳細は、また追ってご案内いたします。
2026年もどうぞよろしくお願いいたします。

カワムラアーキテクツ
川村浩二

前職で手掛けた住宅を訪ねて━庭のある時間

先日、関西方面での現地調査の後に、十数年前に前職で担当した住宅を訪ねる機会がありました。(彦根建築設計事務所/TJM)
ガレージの門をくぐると、中庭の緑の先に建物が見え隠れする構成です。
竣工時から施主様の手入れが行き届いていて、時間とともに育まれた「庭のある暮らし」の豊かさが静かに息づいていました。

今年初めに読んだ宇野常寛さんの『庭の話』にもあるように、庭とは人の意志と自然の営みが交差する場所です。
この住まいもまた、設計の意図と住まい手の手入れ、そして時間の流れが重なり合いながら、美しく成熟していました。

建築はつくった瞬間に完成するものではなく、暮らしとともに完成へと向かうもの。庭を通して、その「時間のデザイン」を感じた訪問でした。

緑の土手の先に母屋が見え隠れします


書籍では「庭」はあくまでも情報社会論を語る上での比喩表現として使われていますが、実態の「庭」についても様々な言葉で語られていて思考の整理になりました