この夏、NHKで放送されたドラマ『舟を編む』を観ました。辞書をつくる人たちの、あの静かな情熱に胸を打たれました。
一つひとつの言葉の意味を確かめ、何度も議論を重ね、何年もの時間をかけて一冊を編み上げていく。誰かの暮らしの中で、いつかふと開かれるその瞬間のために。
その姿を見ながら、建築設計の仕事と重なって見えました。家づくりもまた、図面の線一本から始まり、素材を選び、寸法を調整し、職人さんと話し合いながら、少しずつ形になっていく“編む”ような仕事です。
完成したときには見えなくなってしまう部分に、実はいちばん多くの時間と手間がかかっています。でも、そうした見えない積み重ねこそが、人の暮らしを長く、やさしく支えてくれるものになる。
『舟を編む』の中で描かれていた、静かだけれど、確かな熱を持った人たちの姿を思い出しながら、私たちも今日もまた、ひとつの家を丁寧に編んでいきたいと思います。
いま手がけている「ケヤキと暮らす家」も、そんな思いを込めながら進んでいます。

